緑釉皮嚢壺
中国 遼時代(907-1125)
高さ32.0cm
遼は内蒙古の契丹族がおこした王朝で、200年余り中国の北方を支配しました。遼時代の陶磁器は遊牧民であった契丹人の好みを反映した独特の形の器が作られました。その典型的なものが皮嚢壺で、遊牧民が日常使用した水や酒を入れた皮袋を模したものです。実用の皮袋をかたどった素朴なものからこの作品のように、いかにも貴人用と思われる意匠をこらしたものまで、さまざまな形があります。この皮嚢壺は上部に蓋付きの注口とその側に二匹の猿が腰を据えている珍しい作品であり、また作行もたいへん優れたものです。胴部には刻線でパルメット文が描かれ、その上に緑釉が施されていますが、その一部が銀化して表面が銀色に輝いてみえます。形、デザイン、大きさもたいへん似通った作品がアメリカのボストン美術館に所蔵されています。