本日、12月28日(土)で本年の仕事納めとさせていただきます。
秋に開催された東美特別展以降、本当にあっという間に時間が過ぎていきました。
近況のご報告ですが、大英博物館で開催中の春画展は大評判のうちにいよいよ1月5日に閉幕します。予想をはるかに上回る来場者数とその反応の良さに主催者、関係者は大へん満足しています。
ただ残念ながら、日本開催はまだ決まっておりません。私のところにも朝日新聞、毎日新聞、共同通信などいろいろなメディアが取材に来られますが、「なぜ日本で春画展が開催できないのか」という点に質問が集中します。東京大学の木下直之教授は読売新聞紙上で「わざわざロンドンにまで足を運んで、ようやく日本の文化遺産にふれるという奇妙な事態が生じている。」「何よりも問題は、日本社会の中にある偏見で、春画を見ないままに拒否する傾向が強い。食わず嫌いである。それは明治政府が下した全否定が今なお生きているということでもある。」と述べておられます。
「芸術新潮」12月号では"大英博物館「春画」展がすごい"という大特集が組まれました。私も「当代春画界の名士たち」という小見出しが付いた写真で、木下教授、大英博物館のティモシー・クラーク氏、淺木正勝氏と一緒に紹介されています。
本日発売の「目の眼」2月号でも"大英博物館へ春画を見に行く"という特集が組まれていて大英博物館日本セクション長・ティモシー・クラーク氏、ロンドン大学教授・アンドリュー・ガーストル氏とロンドン大学アジア・アフリカ研究学院研究員・矢野明子氏の鼎談が載っています。同じ号で脳科学者・茂木健一郎氏の「骨董体験記」に浦上蒼穹堂が登場しています。葛飾北斎の「富嶽百景」から「北斎漫画」、そして今が旬の「春画」論に話が発展し、とても盛り上がりました。茂木さんは北斎の筆力や構図に感嘆し「一体、日本人には個性も独創性もないという俗説は、何に由来するものなのだろう。」と述べておられます。また春画について「大英博物館が春画の本格的な展覧会を開くということは、つまり、それが「世界」の美術界の公式的な文脈の中で評価されるということを意味する。」「春画はポルノではない。むしろ、人間賛歌である。そのことを、私たち日本人は、皮肉なことに今やイギリスの人たちに教えてもらわなければならないのかもしれない。」「外からの眼を通して、私たちは、ようやく、私たちの祖先の持っていた温かい人間観に接続できるというのか。ものごとの本質を見えにくくしているものは、現代日本の中の、いったい何者なのだろう。」と
喝破されています。私のことも「ご主人の浦上満さんは、好奇心に満ちた、文化を愛する人。一度説明を始めると、古美術への愛というエンジンに駆動されて、どうにも止まらない。」と記しておられます。
洋泉社MOOK「画狂人 北斎の世界」(「北斎漫画」出版200周年記念!)が12月4日に発売されました。河野元昭先生はじめ樋口一貴氏、日野原健司氏、秋田達也氏などが執筆されています。私も「世界一のコレクターが教える『北斎漫画』のマニアックな楽しみ方」という題で「北斎漫画」について語っていますので、よろしければご笑覧ください。
12月15日に発売されたPenの新年合併号では「浮世絵の正体。」という大特集が組まれています。「江戸の街に咲き誇ったポップカルチャー」という副題で、安村敏信先生はじめ浅野秀剛先生、藤澤紫さん、茜さんなどが案内人として解説されています。私も「北斎漫画」の案内人として登場します。合わせてご笑覧いただければ幸いです。
今年も大へんお世話になりました。本当にありがとうございました。
皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください!