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コラム 古陶磁ー唐三彩万年壺
2010.2. 4 コラム-古陶磁
中国 唐時代(AD618-907)
高さ18.6cm 径22.2cm中国陶磁の長い歴史の中で、最もきらびやかな美しさを賞されるものーそれは唐三彩、といってもさしつかえないと思います。中国陶磁に興味をお持ちの方なら、一度や二度は必ず唐三彩を見たことがあるでしょう。世界中の美術館、博物館に所蔵されていて、中国陶磁の中でも最もよく知られたものの一つといえます。しかし、その存在が知られるようになったのは、わずか100年程前なのです。20世紀の初め頃、河南省洛陽付近で鉄道工事がおこなわれたときに、多くの唐墓が壊されて、莫大な量の唐三彩が発見されました。そして、世界中の学者やコレクターの注目を集め、欧米や日本などに運ばれていきました。唐三彩の大部分は副葬品で、実用品ではなかったため、この工事で大量に発見されるまでほとんど知られていなかったのです。
三彩とは三色の釉をかけたものという意味で、基本は緑と茶と白を指します。この万年壺は堂々とした形に鮮やかな三彩が施釉された名品です。 -
コラム 古陶磁ー彩陶豆
2009.10.19 コラム-古陶磁
中国新石器時代馬家窯文化(B.C.3800−2000)
高さ25.3cm
弓場紀知著「古代の土器」(平凡社)所載素焼きの肌に黒やセピア色で彩色文様を施した一群の土器を、一般にアンダーソン土器とよんでいます。それは1921年、スウェーデンの地質学者J・アンダーソンが中国の河南省仰韶村において彩文土器を発見したことによっています。ここに中国陶磁の歴史は、新石器時代までその発祥が遡ることとなったのです。
アンダーソンは、その彩文をもった土器の起源を西アジアではないかと考えたのですが、20世紀後半、中国の考古学者たちの精力的な調査、研究により中国の彩文土器は中国という文化圏の中で発祥し、展開したということが証明されました。また、中国では土器という称をつかわずに、土器も陶とよぶので、これらの彩文土器も彩陶とよばれます。
この豆とよばれる台鉢のような作品は、黄河上流、甘粛省の馬家窯文化の典型作です。今から約5000年前の作品とは思えない斬新な幾何学文が描かれています。 -
コラム 古陶磁ー緑釉皮嚢壺
2009.7.16 コラム-古陶磁
緑釉皮嚢壺
中国 遼時代(907-1125)
高さ32.0cm
遼は内蒙古の契丹族がおこした王朝で、200年余り中国の北方を支配しました。遼時代の陶磁器は遊牧民であった契丹人の好みを反映した独特の形の器が作られました。その典型的なものが皮嚢壺で、遊牧民が日常使用した水や酒を入れた皮袋を模したものです。実用の皮袋をかたどった素朴なものからこの作品のように、いかにも貴人用と思われる意匠をこらしたものまで、さまざまな形があります。この皮嚢壺は上部に蓋付きの注口とその側に二匹の猿が腰を据えている珍しい作品であり、また作行もたいへん優れたものです。胴部には刻線でパルメット文が描かれ、その上に緑釉が施されていますが、その一部が銀化して表面が銀色に輝いてみえます。形、デザイン、大きさもたいへん似通った作品がアメリカのボストン美術館に所蔵されています。 -
コラム 古陶磁ー唐白磁共蓋万年壺
2009.6.16 コラム-古陶磁
中国 唐時代(AD618-907)
高さ23.8cm
前回、白磁とは白い素地に透明釉をかけ、高火度焼成したやきものと定義しましたが、その白磁の起源は近年の調査、研究で、北斉時代(550- 580)ということがわかってきました。そして、隋時代を経て唐時代に大いに発達します。技術的にいえば、それまで主流だった青磁から、胎土や釉薬の不純物を取り除くことによって白磁は完成します。その背景として、当時の貴族たちの美意識の変化がありました。この頃、シルクロードを通じてもたらされた西方のガラスや銀器に触発されて、白磁という新しいファッションがたいへん流行しました。唐時代の人々も結構、新しもの好きだったようです。
この胴が丸々と豊かに張った壺は、万年壺と呼ばれます。穀物などが入った状態で出土する例があることから、万年の糧を蓄える壺として、この名が生まれました。まさに盛唐期を代表する器形といえます。底裏は平底で、宝珠形のつまみをもつ蓋がついています。
この時期の豊かな文化を象徴するように、よく整った美しい形をしています。 -
コラム 古陶磁 - 青白磁瓜形水注
2009.4. 9 コラム-古陶磁
中国 北宋時代(960 - 1126)
景徳鎮窯 高さ17.1cmこのコラムの古陶磁カテゴリでは、中国古陶磁を毎回1点取り上げて解説していきます。
第1回は青白磁瓜形水注です。
白磁とは、白い胎土に透明釉をかけたやきもののことをいいます。それでは青白磁とは何でしょう。
青磁?白磁?それともハーフ? 上の写真をよく見てください。白がベースでやや青みがかっていませんか。そう結論からいうと、青白磁は白磁の一種と考えてかまいません。ただ透明釉が青みをおびていて、とくにくぼみになって釉がたまりやすいところは、ブルーイッシュに見えます。
古来、中国の人々はこの青く澄んだ色合いのやきものを「影青(いんちん)」と呼びならわして愛玩してきました。景徳鎮窯で焼かれた青白磁は、常に世界をリードしてきた中国陶磁の歴史においても、ひときわ高い峰を形成している宋代(960-1279)の陶磁器(宋磁)の代表的なものの一つです。
釉の美しさも重要ですが、何より形が大切です。この水注には端正さと緊張感そして気品が備わっています。900年前の高貴な人々が美酒を入れて楽しんだものと思われます。