コラム記事一覧

  • 今日で2月が終わります

    2月は東京で45年ぶりの大雪が、2度も降りました。ここは雪国かと一瞬思ったほどです。
    ここ2、3日は急に春めいた暖かさですが、明日からはまた寒くなるということです。
    三寒四温、不順な天候が続きますが、皆さまくれぐれも体調にお気をつけください。

    今日、『陶説』3月号が届きました。古染付特集号で、私も巻頭エッセイで「古染付礼賛」という駄文をを書かせていただきました。私が古染付を好きになったルーツから、江戸初期以来、古染付が日本人の心を捉えたわけや、そのデザインに官僚登用試験の「科挙」の影響が見られることなど、私が日頃思っていることを少しばかり書きました。古染付大好き人間の私としては、理屈はともかく、古染付の絵付けは本当に自由で型にはまらず見ていて飽きないことや、空間処理の妙をお伝えしたかったのですが、舌足らずの感は否めません。
    やはり本日、2月28日『中日新聞』の金曜寄稿欄に春画「展」考と題した私の駄文が載っています。いや載っているはずです、なぜなら私の手元にもその新聞がまだ届いていないからです。旧知の中日新聞文化部黒谷記者の依頼で原稿用紙4枚ほど書きました。内容は大英博物館で開催された「春画ー日本美術における性とたのしみ」展の見聞記と「大好評のうちに無事終了した」というマクレガー館長の私宛ての手紙などをご紹介したものですが、最後は以下のような文章で締めくくりました。「春画は、出版物に関しては23年前から無修正で流通していて何の問題も起きていません。本はよくて、本物は駄目というのもおかしな話です。春画に限らず美術品は、本物を見ることが何より大切です。そこに感動があるからです。見たい人は見る、見たくない人は見ない。当たり前の大人の文化を日本に1日も早く定着させたいものです。」

    アートフェア東京2014がいよいよ来週3月7、8、9日に開催されます。今年は例年より2週間ほど早い日程です。浦上蒼穹堂は「北斎漫画」初編刊行200周年を記念して、「北斎漫画」を展示いたします。ほかに北斎が75歳から発表した「富嶽百景」も同時に展示しますので、ぜひ比較してみてください。もちろん、専門である陶磁器も中国の新石器時代から漢時代の作品を中心にパワフルな世界をご覧いただきます。どうぞブースNo.R41へお越しください。
    なお、浦上は最終日3月9日(日)11時よりトークイベント「観る、買う、護る ー魅惑の木版画から古美術、現代アートまでー」に、サラリーマンコレクター宮津大輔さん、横浜美術館主席学芸員沼田英子さんと3人で登壇します。場所はアートフェア東京会場内トーク会場です。


    アートフェア東京2014

    会場: 東京国際フォーラム 展示ホール
    ブースNo. R41

    開催日時
    3月7日(金) 11:00 - 21:00
    3月8日(土) 11:00 - 20:00
    3月9日(日) 10:30 - 17:00

    http://artfairtokyo.com/gallery/8182.html

    トークイベント   http://artfairtokyo.com/event/16161.html


  • 遅まきながら 明けましておめでとうございます

    1月23日にもなって、新年のご挨拶というのも間の抜けた話ですが、やはり季節のけじめとして
    "皆さまには お健やかに佳き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます"
    ちなみに今年の中国の旧正月(春節)は1月31日です。春節は中華圏で最も重要とされる祝祭日で、新暦の正月に比べ盛大に祝賀が繰り広げられます。

    さて、2014年の浦上蒼穹堂は、創立35周年を迎えます。ついこの間、30周年記念展をやったばかりと思っていましたが、月日が経つのは本当に早いものですね。今のところ35周年記念事業は特に考えておりませんが、3月6〜9日に開催される「アートフェア東京」、4月24日〜26日「東京アートアンティーク」、10月17日〜19日「東美アートフェア」に参加することは決まっています。特に「アートフェア東京2014」はボードメンバーの1人としてミーティングなどを重ねています。1月27日(月)13時半からパレスホテル東京で山本豊津氏らとともに記者発表会に登壇します。
    現在、江戸東京博物館で開催中の「大浮世絵」展は国際浮世絵学会創立50周年を記念した展覧会で、浮世絵の名品がずらりと展観されています。連日大盛況で1日平均3600人、土曜日はなんと6000人もの入場者があるそうです。私も国際浮世絵学会常任理事(4月からは総務委員長に就任予定)をさせていただいている関係上、大へん嬉しく思っていますが、あんまり混みすぎて人の頭越しにしか作品を見られないのでは、鑑賞者も満足されないかもしれません。その点、去る1月5日に閉幕した「大英博物館春画展」はゆっくり鑑賞できるように入場制限をしていました。昨夜、今回の大英春画展の立役者である、大英博物館日本セクション長のティム・クラーク氏とお会いし、いろいろお話をしたのですが、3ヶ月間の総入場者数は約9万人(当初予想の2倍)、その内55%が女性、鑑賞時間は入場者1人平均70分など非常に興味深い報告がありました。また来場者へのきめ細かいアンケートを実施し、その中に「情感が豊かで遊び心に富む日本人の隠れた一面を知り、日本人に対する印象が好転した」という内容のものもありました。
    我々関係者一同、引き続き春画展日本開催に向けて、一層努力することを確認しました。
    一昨日(1月21日)の毎日新聞朝刊では、青柳文化庁長官の「かつては娘たちが嫁入り道具として持って行くようなもので、ポルノグラフィーとは違った社会的存在であることを国内でも堂々と示すべきだ。」というコメントを紹介し、この記事を書いた女性記者は「大英博の展示で初めて実物に触れ、江戸時代の庶民の生活文化を表した興味深い美術作品、との印象を持った」と述べ、「春画は美術の一ジャンルであり、性をおおらかにとらえていたかつての日本人の意識を伝える文化財であるとの認識が広がりつつある」「大英博の展示が、近世文化のエッセンスが詰まった春画を自国の文化として見直すきっかけになってほしい」と特集記事を結んでいます。

    1月1日発売の「月刊ギャラリー1月号」に、詩人の小川英晴氏と私との対談が載りました。「本物を見る目 見抜く目」というタイトルで9ページに渡って大いに2人で古美術について語り合っています。小川氏は序文で「満を持してと言うべきか、いよいよと言うべきか、今月の対談のお相手はかねてより敬愛の念を抱いていた浦上蒼穹堂の浦上満さんである。」「浦上満さんは今も自ら信じる美を求めて中国陶磁の名器を紹介し続けている。読者諸氏も一度は浦上蒼穹堂を訪ねて数々の名品にじかに目で見、手にしてほしい。古代からの名品を観ずして現代美術を語るなかれ、これが浦上蒼穹堂に通って、私が得た結論である。」と述べておられます。よろしければ月刊ギャラリー1月号をご覧ください。

  • 良いお年をお迎えください。

    本日、12月28日(土)で本年の仕事納めとさせていただきます。
    秋に開催された東美特別展以降、本当にあっという間に時間が過ぎていきました。
    近況のご報告ですが、大英博物館で開催中の春画展は大評判のうちにいよいよ1月5日に閉幕します。予想をはるかに上回る来場者数とその反応の良さに主催者、関係者は大へん満足しています。
    ただ残念ながら、日本開催はまだ決まっておりません。私のところにも朝日新聞、毎日新聞、共同通信などいろいろなメディアが取材に来られますが、「なぜ日本で春画展が開催できないのか」という点に質問が集中します。東京大学の木下直之教授は読売新聞紙上で「わざわざロンドンにまで足を運んで、ようやく日本の文化遺産にふれるという奇妙な事態が生じている。」「何よりも問題は、日本社会の中にある偏見で、春画を見ないままに拒否する傾向が強い。食わず嫌いである。それは明治政府が下した全否定が今なお生きているということでもある。」と述べておられます。
    「芸術新潮」12月号では"大英博物館「春画」展がすごい"という大特集が組まれました。私も「当代春画界の名士たち」という小見出しが付いた写真で、木下教授、大英博物館のティモシー・クラーク氏、淺木正勝氏と一緒に紹介されています。
    本日発売の「目の眼」2月号でも"大英博物館へ春画を見に行く"という特集が組まれていて大英博物館日本セクション長・ティモシー・クラーク氏、ロンドン大学教授・アンドリュー・ガーストル氏とロンドン大学アジア・アフリカ研究学院研究員・矢野明子氏の鼎談が載っています。同じ号で脳科学者・茂木健一郎氏の「骨董体験記」に浦上蒼穹堂が登場しています。葛飾北斎の「富嶽百景」から「北斎漫画」、そして今が旬の「春画」論に話が発展し、とても盛り上がりました。茂木さんは北斎の筆力や構図に感嘆し「一体、日本人には個性も独創性もないという俗説は、何に由来するものなのだろう。」と述べておられます。また春画について「大英博物館が春画の本格的な展覧会を開くということは、つまり、それが「世界」の美術界の公式的な文脈の中で評価されるということを意味する。」「春画はポルノではない。むしろ、人間賛歌である。そのことを、私たち日本人は、皮肉なことに今やイギリスの人たちに教えてもらわなければならないのかもしれない。」「外からの眼を通して、私たちは、ようやく、私たちの祖先の持っていた温かい人間観に接続できるというのか。ものごとの本質を見えにくくしているものは、現代日本の中の、いったい何者なのだろう。」と
    喝破されています。私のことも「ご主人の浦上満さんは、好奇心に満ちた、文化を愛する人。一度説明を始めると、古美術への愛というエンジンに駆動されて、どうにも止まらない。」と記しておられます。
    洋泉社MOOK「画狂人 北斎の世界」(「北斎漫画」出版200周年記念!)が12月4日に発売されました。河野元昭先生はじめ樋口一貴氏、日野原健司氏、秋田達也氏などが執筆されています。私も「世界一のコレクターが教える『北斎漫画』のマニアックな楽しみ方」という題で「北斎漫画」について語っていますので、よろしければご笑覧ください。
    12月15日に発売されたPenの新年合併号では「浮世絵の正体。」という大特集が組まれています。「江戸の街に咲き誇ったポップカルチャー」という副題で、安村敏信先生はじめ浅野秀剛先生、藤澤紫さん、茜さんなどが案内人として解説されています。私も「北斎漫画」の案内人として登場します。合わせてご笑覧いただければ幸いです。

    今年も大へんお世話になりました。本当にありがとうございました。
    皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください!

  • 東美特別展のご報告

    先月10月18日(金)〜20日(日)に開催された東美特別展は、大勢のご来場者があり大へん盛況でした。浦上蒼穹堂のブースもお好きな方々が続々とお見えになり、熱心に展示作品をご覧くださいました。お陰さまで成績も大へんよく、あらためて御礼申し上げます。先週末、東美特別展報告会が美術倶楽部でありましたが、プレビューを含む総入場者数が5000人を超えたそうです。嬉しいことにご来場者のアンケートの集計結果で、私ども浦上蒼穹堂が「印象に残ったブース」の第1位にランクされました。昨年秋の東美アートフェアに引き続きの栄誉に重ねて御礼申し上げます。
    今後とも一層、ユニークな企画と優れた作品を皆さまに見ていただくよう努力しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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    私が参加しているもう1つのアートフェア、「アートフェア東京」は来年春(2014年3月6日〜9日) 東京国際フォーラムで開催されますが、こちらも東美特別展と同じくプレビュー(木)と一般公開3日間(金・土・日)の日程で行われます。2つのアートフェアの入場者数を比較するとアートフェア東京はここ数年5万人をキープしていて、東美特別展の約10倍という数字です。ただ東美特別展の方が展示作品を購入されるお客様がずっと多いというのも事実です。私は以前、東美特別展の準備委員長を5年半務めたことがあり、また今回からアートフェア東京のボードメンバーに選任されました。微力ですがそれらの経験を生かし、この2つのアートフェアがキャラクターの違いを意識しながら、それぞれ刺激しあって発展していくことに貢献できたらと思っています。

  • 大英博物館春画展開催

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    一昨夕(10月8日)、ロンドンより帰ってきました。10月1日(火)に日本を発ちましたので一週間の滞在でした。10月2日(水)の18時30分から大英博物館日本ギャラリーに於いて開会式があり、まずNeil MacGregor館長の挨拶があり、引き続きスポンサーであるShunga in Japan LLPを代表して浅木正勝氏、最後にイギリスでも有名なコメンテーターJoan Bakewell女史のスピーチが続きました。三者とも今回の春画展について、それぞれ内容の濃いスピーチで300名ほどの招待客から大きな拍手が湧きました。乾杯の後、参加者全員が徐々に1フロア下の会場へ移動して展示をみたのですが、これがまた大へん好評で鑑賞者の滞留時間がとても長く、21時の閉館まで大勢の人が会場に残っていらしたのが印象的でした。翌3日(木)から一般公開が始まり、いきなりたくさんの入場者が続きました。その場にいた関係者によると男性より女性の方が多かったそうです。現地のメディアでも新聞やラジオ、テレビなどでかなり大きく取り上げられ、それも単に興味本位ではなく、展覧会内容を深く掘り下げた報道が目立ちました。The Guardian紙などはこの展覧会に4つ星(5つ星が最高ですが、今まで5つ星をとった展覧会はないそうです)をつけたほどです。4日(金)、5日(土)は、国際シンポジウムが大英博物館のBP Lecture Theatre で開催されイギリス、アメリカ、カナダ、スペインそして日本の研究者たちの発表と討論会が10本以上ありました。私もこのシンポジウムに2日とも参加しましたが、日本の春画についての新知見も多く、大へん勉強になりました。その際も「なぜこの展覧会が日本に巡回出来ないのか」という発言が数多くありました。肝心の展覧会入場者数ですが、私も滞在中はほぼ毎日大英博物館の会場へ足を運びましたが、いつも満員で入場制限すらしていました。入場者は老若男女いろいろですが、皆とても熱心に食い入るように作品をみていました。展覧会図録も全展示作品の図版、さらに世界中から35名の学者、研究者の論文が掲載され、536ページに及ぶとても豪華で立派なものとなりました。来年1月5日までにロンドンに行かれる方は大英博物館で開催中の"Shunga: Sex and Pleasure in Japanese Art"展をぜひご覧ください。


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    こちらは、オススメの記事です。

    http://www.telegraph.co.uk/women/sex/10304672/Japanese-shunga-can-teach-the-prudish-West-a-thing-or-two-about-sex.html

    http://www.theguardian.com/artanddesign/2013/oct/01/shunga-sex-pleasure-erotic-japanese-art

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    展覧会情報
    The British Museum
    Shunga: Sex and Pleasure in Japanese Art
    2013年10月3日〜2014年1月5日
    http://www.britishmuseum.org/whats_on/exhibitions/shunga.aspx


  • いよいよ10月です!

    「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、あれほど暑く長かった夏もやっと終息し、朝晩は少し寒いくらいになってきました。皆さまいかがお過ごしですか? 明日からはいよいよ10月です。
    10月18日、19日、20日の3日間、東美特別展が開催されます。1964年の東京オリンピック開催に合わせて第1回展が催され、今回が19回目です。
    浦上蒼穹堂は前回と同じく3階のブース29で展示します。今回のハイライトは北宋青白磁牡丹唐草文百合口瓶です。写真と解説、来歴をご覧下さい。


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    青白磁牡丹唐草文百合口瓶
    北宋時代、景徳鎮窯は薄い白磁胎に青みの強い透明釉をかけた青白磁を完成させた。この青白磁は影青ともよばれ、片切彫りで文様が施されると、彫りの深浅に従って釉の青さに濃淡が生じ、夢幻的な装飾効果を挙げるのである。この瓶はそうした青白磁特有の装飾効果が最も美しく顕れた作といえよう。尊形の瓶で、丸い胴から直線的に頸部が伸び、その口は縁が百合の花のように形作られている。胴裾は細く締まり、薄く高めの高台がつく。百合口も丁寧な成形であるが、細やかな工夫は胴を覆う牡丹唐草文にも認められる。すべての文様の輪郭をごく細い刻線で描いてから、それにしたがって丁寧に片切彫りを施し、花弁や葉の一つ一つに浅い櫛掻きを加えている。この牡丹唐草文の葉の形が牡丹の花弁とほとんど同じなので、全体が花びらに覆われているように見える。まさに青白磁の白眉といえる作品である。

    ■所載
    『世界陶磁全集・宋』小学館
    『中国の陶磁5・白磁』平凡社
    『陶磁大系37・白磁』平凡社
    『龍泉集芳 ?』繭山龍泉堂
    『中国名陶百選展』日本経済新聞社
    『中国陶磁シリーズ8・宋代の青白磁』大阪市立東洋陶磁美術館
    『中国美術展シリーズ4・宋元の美術』大阪市立美術館
    『中国陶磁の八千年』矢部良明 平凡社
    『陶器講座6・中国2・宋』小山冨士夫 雄山閣
    『日本陶磁大辞典』角川書店

    ■出陳
    東京国立博物館「中国の陶磁展」1994年
    愛知県陶磁資料館「東洋陶磁名品展」1994年
    大阪市立東洋陶磁美術館「宋磁展」1999年
    泉屋博古館分館「中国陶磁 美を鑑るこころ」2006年


    他にも明正徳緑彩龍文盤(在銘)など優品をたくさん展示しますので、ぜひ会場にお越しください。お待ちしております。

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    開催日時
    10月18日(金) 10:00 - 19:00
    10月19日(土) 10:00 - 18:00
    10月20日(日) 10:00 - 17:00

    会場:東京美術倶楽部
    ブース No.29

    http://www.toobi.co.jp/special/index.html


    ところで、明日から一週間ほどロンドンへ行ってきます。
    大英博物館で10月3日から始まる「春画-日本美術における性とたのしみ」展のオープニングとシンポジウムに出席するのが主な目的です。今年2013年は、J400といって英国と日本が正式に国書を交換してからちょうど400年目にあたります。この展覧会はJ400の目玉企画で、質量ともに過去最高最大の春画展といえます。
    ひょんなご縁から、浅木正勝氏と私がこの展覧会のスポンサーになったのですが、10月2日のオープニングレセプションでは大英博物館館長の次にスポンサーを代表して浅木さんが挨拶をされます。こっそりその内容の一部をご紹介すると、「我が国の急速な近代化の中で、春画は積極的には評価されないままでありました。実際、これまで本格的な春画の展覧会は、我が国では行われておりません。この大英博物館の展覧会の成果によって、我が国にあっても、充実した展覧会が開催されることを心より願っております。」と、正に日本での巡回展を期待している方々の気持ちを代弁されています(する予定です)。私も実際にどのような展観になっているのか、拝観するのが今からとても楽しみです。また帰国しましたら、ご報告させていただきます。


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  • 酷暑お見舞い申し上げます

    お暑うございます!!
    今年の夏は本当に記録的な猛暑ですね。 みなさま 如何お過ごしですか?
    蒼穹堂も8月19日から通常営業に戻り、秋からの企画展などの準備に取りかかっています。

    さて、前回お伝えした7月のサザビーズ香港ギャラリーに於ける春画展のオープニングレセプションに青山学院大学客員教授の岩渕潤子さんが、忙しい中香港まで取材に来られたのですが、その時の模様を今週、彼女が編集長をしているアグロスパシアのサイトに「春画:"江戸のクール"と"クールじゃない"今の日本」という題で記事にしてくださいました。 ご興味のある方はご覧下さい。

    http://agrospacia.com/article/00063


  • Sotheby's Hong Kong Gallery 「春扉」展

    先週の火曜日(7月16日)から金曜日(7月19日)まで香港に行ってきました。
    今回の主な目的はサザビーズ香港のギャラリーで7月18日(木)〜7月31日(水)まで開催される"Beyond The Paper Screen" のオープニングに参加することでした。この展覧会(非売)は私の浮世絵春画コレクションの中から60点を厳選して、昨年オープンしたサザビーズ香港ギャラリーで展示するというもので、香港では初めての日本春画展です。昨年秋からサザビーズのNicolas Chow氏(中国部門ヘッド)と話を進め、今年の春から作品選定など具体的展示プランを練ってきました。サザビーズ側の反応は実に精力的かつ積極的なもので、私もその熱意に共感し、エッセイを書いたり年表を作成したり、香港の人達にできるだけ正しい情報を伝えようと準備しました。16日はギャラリーでの展示確認とスタッフミーティング、翌17日の昼からはびっしりと新聞、雑誌などのインタビューが夕方まで続きましたが、驚くほど熱心にいろいろな質問をされました。18日のオープニングはその反響がピークに達し、11時から16時過ぎまでテレビや雑誌等のインタビュー、そして17時から私と香港サザビーズCEO、Kevin Ching氏と2人で1時間のトークショー(これも立ち見が大勢いるほどの盛況)、18時から20時にはワインを片手に150名ほどの招待客と作品を見ながら懇談、この時もいろいろな質問が飛び交い彼らの関心の高さに驚きました。その後Kevin、Nicolas、Angelika、Yukako はじめサザビーズ側関係者と私サイドの招待客も含めてディナーを楽しみ、大いに盛り上がりました。帰国日の19日も朝8時半からラジオ局でのインタビューがあり、引き続きインターネットメディアの取材(動画付き)と、最後まで取材攻勢が続きました。中国新聞社、香港電台、香港経済日報、Bloomberg、ARTRON、Apple Dailyなどの記者、インタビュアーは単に興味本位の質問だけでなく、春画の歴史的背景や社会との関わりなども聞いてきました。私も「江戸時代の日本人は、男性も女性も今よりずっとおおらかで粋だったのではないか、今回の春画展を見ていただいてそこに描かれた四季、着物、調度品などを通じて日本文化の幅の広さや奥深さを感じ取っていただけたら嬉しいです」などと話しました。

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  • 美食同源の会/根津美術館講演会

    前回のブログから1ヶ月たちました。近況のご報告です。

    6月20日、西麻布の懐石料理店「いち乃」(2013年版ミシュラン一つ星獲得)で美食同源の会を開催いたしました。この企画はボルドー大学公認ワインテイスターでサンク・センス代表の松浦尚子さんと以前から話し合っていたもので、今回「いち乃」のご協力を得て実現したものです。この日のために特別にアレンジされた10品の料理と松浦さんが厳選した5種類のワインに舌鼓を打ち、そして料理を盛る器は私が用意した古染付の4種の皿や盃を使いました。目と舌で楽しみ、古美術への知識や関心も深められたらという主旨の会でしたが、会場にはプライベート美術館のように鑑賞用の鉢や皿も10点ほど展示し、食器として使った古染付の器ともども私が解説や由来について話をしました。もちろん「いち乃」料理長西山さんがその日の料理の説明、松浦さんから料理に合わせたワインについての含蓄あるお話があり、「器と料理、ワイン」の三位一体を五感で味わう一夜は大へん盛り上がりました。参加された方々も大へん満足されたようで、またこのような機会があれば是非知らせてほしいという方がたくさんいらっしゃいました。

    6月29日、根津美術館で開催中の山口県立萩美術館・浦上記念館名品展「やきものが好き、浮世絵も好き」の関連プログラムとして企画された、「息子が語る父のコレクション」という題の講演会で私がお話をさせていただきました。根津美術館地下1階の講堂(定員140名)は事前申込ですでに満席になっていて、当日は追加で用意された補助椅子もいっぱいの盛況でした。基本的には展示されている中国・朝鮮の古陶磁130点の中から私が約3分の1を選び、それをパワーポイントでお見せしながら解説したのですが、それぞれの作品にまつわる思い出なども交えて1時間15分ほどお話させていただきました。残りの15分で父・浦上敏朗が今展の御礼も込めて所感を述べさせていただき、最後は西田宏子副館長と父、私の3人で鼎談風に浦上コレクションやそれに関わった人々のお話をいたしました。来場された方々が大へん熱心に聞いてくださったのが印象的でした。翌日から私のところにも講演会の感想が書かれている手紙やハガキが10通以上も届き、大へん嬉しく感謝しています。


  • 根津美術館に於いて萩美術館・浦上記念館名品展開催

    6月1日(土)〜7月15日(月・祝)の間、南青山の根津美術館で山口県立萩美術館・浦上記念館名品展「やきものが好き、浮世絵も好き」が開催中です。この美術館は、私の父、浦上敏朗が中国・朝鮮の古陶磁と浮世絵版画あわせて約2500点を山口県に寄贈したことをきっかけとして平成8年(1996)に開館しました。今回は所蔵品の中から東洋陶磁130点と浮世絵62点、計192点を厳選して展示されています。5月31日(金)のオープニングレセプション及び内覧会には約700名ほどの招待客が来場され、大盛況でした。根津公一館長と昨年まで山口県知事を4期16年間つとめられた二井関成館長のご挨拶、来賓として近藤誠一文化庁長官ご夫妻、元内閣官房長官河村建夫先生、駐日フランス大使ご夫妻、野村興兒萩市長らが出席され、今年87歳になった父と母も感無量だったと思います。
    日本の浮世絵と中国・朝鮮陶磁の組み合わせはちょっと変わっていると思われるかもしれませんが、展覧会パンフレットには「いずれも質の高い魅力的なコレクション」とあります。確かに、一人の審美眼で選び抜かれたそれらの作品たちは何か共通、共鳴するものを漂わせているように感じられます。
    息子が親のコレクションを誉めるなどということは、愚の骨頂ですが、私も古美術商として40年近くやっていますが、その目で見ても確かに目筋のいいコレクションだと思います。必ずしも網羅的ではないのですが、ピリッと小股の切れ上がったような作品が多いとあらためて感じました。
    嬉しいことに展覧を見られた方々から「大へんよかった」「素晴らしかった」というご感想が私のところへもたくさん寄せられています。ご興味のある方は是非、根津美術館へお出かけください。(10時〜17時、月曜休館)

    6月29日(土)午後2時より「息子が語る父のコレクション」というタイトルで私も講演いたします。
    (参加ご希望の方は、6月15日までに往復はがきで根津美術館講演会係までお申し込みください)

    なお以下の雑誌、新聞、TVで今回の展覧会が取材、掲載されています。
    「目の眼」7月号 特集「はなてばてにみてり」
    「陶説」6月号 特集「浦上コレクション」
    「ART collectors'」6月号
    「小さな蕾」7月号
    The Japan Times」(6月13日)
    「芸術新潮」7月号「古美術商の息子が見たコレクター浦上敏朗」(6月25日発売)

    NHK「日曜美術館」(6月16日放送)
    山口放送「6時のニュース」(6月5日放送)


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    山口県立萩美術館・浦上記念館名品展
    「やきものが好き、浮世絵も好き」
    http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html